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大阪地方裁判所 昭和37年(ワ)1570号 判決

主文

被告田中義郎は原告に対し別紙目録記載の建物を収去して別紙目録記載の土地を明渡せ。

被告松田健治は原告に対し前項建物から退去して前項土地を明渡せ。

訴訟費用は被告らの負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決と仮執行の宣言を求め、その請求原因として、「原告は別紙目録記載の土地(以下、本件土地という。)を所有している。

被告田中は本件土地上に別紙目録記載の建物(以下、本件建物という。)を所有して本件土地を占有している。

被告松田は本件建物に居住して本件土地を占有している。

よつて原告は、被告田中に対し本件建物を収去して本件土地を明渡すことを、被告松田に対し本件建物を退去して本件土地を明渡すことを求める。」と述べ、

被告らの抗弁に対し、

「被告らの前記各占有は無権原である。原告が昭和三五年七月一八日本件土地を訴外岩橋岩次郎から買受けその所有権を取得したことは認める。」と述べた。

被告田中訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求め、答弁ならびに抗弁として、

「一、原告が本件土地を所有すること、被告田中が本件土地上に本件建物を所有し本件土地を占有していることは認める。

二、抗弁

相被告松田は昭和二二年四月以降本件土地をその当時の所有者訴外木村栄次郎から賃借し、登記簿上妻松田登貴美名義で本件建物を所有していたが、訴外岩橋岩次郎が木村栄次郎から本件土地を取得し、右土地賃貸人の地位を承継していた。被告田中は昭和三三年八月九日被告松田から代物弁済により本件建物所有権を取得し、被告松田の右賃借権を譲受け承継している。ところが原告はその後昭和三五年七月一八日にいたつて訴外岩橋岩次郎から売買により本件土地を取得したものである。」と述べた。

被告松田訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁ならびに抗弁として、

「一、原告が本件土地を所有すること、被告松田が本件建物に居住して本件土地を占有していることは認める。本件建物は被告田中の所有でなく、被告松田の妻登貴美の所有である。

二、抗弁

1、仮に本件建物が被告松田の所有であるとしても、被告松田は昭和二二年四月一日かち本件土地をその当時の所有者訴外木村栄次郎から賃借して本件建物を建築所有していたが、訴外岩橋岩次郎が昭和二五年五月一三日木村栄次郎から本件土地を売買により取得し、右土地賃貸人の地位を承継していた。原告は、その後昭和三五年七月一八日岩橋岩次郎から本件土地を買受けこれを所有するに至つたものであるが、本件建物は昭和二七年六月二一日松田登貴美名義で保存登記を経由しているので、建物保護法一条により、被告は従前の土地賃借権を原告に対抗できる。

2、仮に右抗弁が容れられないとしても、岩橋岩次郎および原告は、右賃借権の存在を知悉して本件土地を取得したものであり、昭和二九年五月被告松田は原告の仲介により岩橋岩次郎から本件土地を買受ける契約をしたが、同売買は手金流れで消滅した事実もあり、本訴請求は権利のらん用である。」と述べた。

証拠(省略)

別紙

目録

土地

所在 大阪市西扇町

〈1〉 地番 五の二

〈2〉 地目 宅地

〈3〉 地積 一九坪九二

建物

所在 大阪市北区西扇町五番地の四(上記は公簿上の所在、実際は右五の二番)

家屋番号 同町三四番

〈1〉 種類  作業場兼居宅

〈2〉 構造  木造瓦葺二階建

〈3〉 床面積 一階一六坪九四、二階一六坪九四

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